米軍がイラクを撤退した。未熟な新イラク軍に対して、旧フセイン派、アルカイダといったテロ集団が攻撃を激化させている。
元々イラクは民主党と親密な関係にあった。カーター大統領時代にはカーター政権の意を受け、イランと戦争を行った。当時、アメリカは大量の軍事顧問をイラクに投入していた。
また、親米派だったサダム・フセインは、長年アメリカ人傭兵を雇ってもいた。
イラン・イラク戦争を振り返ると、一方のイランは共和党とのつながりが深い、カーター時代のイラン革命で捕虜にしたアメリカ大使館員をロナルド・レーガン時代に釈放している。一部のイスラム原理主義者をのぞけば、イラン人の多くが親米である。歴史上、少数の強硬派が多数を引っ張って我を通してしまう例はよくある。
現在のイラクも、多数の国民は戦争やテロにうんざりしているだろうし、アメリカと仲の良い豊かな産油国に戻りたいはずだ。
だが、フセインが政権維持のために煽って来たシーア派とスンニ派の対立、クルドの民族問題は激化する一方だ。
これは開戦前にあったイラク三分割案に沿って、対立が煽られ続けている可能性もある。イラクはゆっくりと三分割に向かっていると見る事もできるからである。
こうした状態で米軍が撤退すれば治安維持力に空白が生じる。現イラク政権は軍事的力をアメリカに依存して来た。そして、今にいたるも自らの治安維持能力を保持していない。彼らのイラク軍は育っていない。また、近い将来に力を持つ見込みもない。
これは撤退が決定した時にわかっていた事だ。サダム・フセインは長期にわたって独裁政権を維持して来ており、現在でもかなりの残存勢力を残している。新しい政府が簡単に治安を維持できるわけはないのである。
そうしたイラク情勢の中、米軍が撤退したのである。
だが、米軍が撤退したといっても、実は米国の軍事力はまだ残っている。民間軍事企業である。こちらは増強されているのである。
もし、これを認めなければ、旧フセイン勢力とアルカイダのようなイスラム過激派によってイラクで大虐殺が引き起こされるだろう。そこで英米の民間軍事企業にその力を委ねるしかないのである。
もちろん、オバマ政権は最初からそのつもりで事を進めて来たはずである。
かくして、イラク戦争は民営化されたのである。